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zoom RSS 『ぼくとママの黄色い自転車』・・・少年の旅、父の嘘、母の愛

<<   作成日時 : 2009/08/25 23:05   >>

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泣かされた。基本感激屋で涙もろい傾向にある私だが、これだけ涙があふれ続けたのは初めてかもしれない。周囲から漏れ聞こえてくるたくさんの嗚咽やすすり泣く声に感情を刺激されたせいも多分にありそうだが、まあとにかく泣けた泣けた。

鑑賞時の興奮が収まってから冷静かつ客観的に思い直してみると、いい涙を流させてもらった割に映画としての深みや奥行きがそれほどなかったような気もするのが残念。まあ泣かせ方そのものにさほどあざとさはないので、そこはよかったと思う。見え見えのお涙頂戴物とは一味違った手堅い脚本が功を奏したというところか。

新堂冬樹の原作「僕の行く道」を読み終えての鑑賞だったが、私にとっては久々に原作を超える映画だった。大筋はそのままになかなかセンスある脚色がなされている。例えば大志少年(武井証)が共に旅するペットは猫から犬になり、新幹線での旅はヒッチハイク等を含む自転車の旅に変更。そして夏休みに咲き乱れる花がコスモスからキイロキラキラソウ(後述)に変わった。このおかげで夏らしさ、そしてロードムービー色が俄然高まった。

花好きの私は原作でのコスモス描写がどうしてもしっくり来なかった。早咲き種とくどくど説明をつけてまで、夏休みの物語に秋の花を起用する意味がわからなかったのだ。それが映画ではまず“黄色い花”というシチュエーションを用意し、大志が黄色い野の花を摘んでは押し花にしながら旅を続ける姿を見せる。うまい。
そして母琴美(鈴木京香)からの手紙にある謎(?)の花“キイロキラキラソウ”。これは幼い頃の大志が名付けた名前で、劇中ではそれがなんという花なのか特に明らかにはならないので、この花の存在が重いテーマの作品にファンタジックな一面を与えてとてもよかった。ちなみにこのキイロキラキラソウ、私にはダールベルグ・デージーのように見えたが、咲き乱れる花壇の映像はどう見てもCG合成っぽく、つまりは架空の花という解釈でいいのだろう。
(この夏寄せ植えに使った我が家のダールベルグ・デージー、いつの間にか消滅したなあ)

大志が生まれたばかりの頃、大志の父一志(阿部サダヲ)は琴美とある約束をする。それは息子に嘘をつきとおすこと。琴美が侵されはじめたある病気はいずれ大志のことを記憶から消してしまう。そうなったときのために、「おかあさんはパリに留学中」という嘘を貫く決断を両親はしたのだ。
どう考えても無茶な嘘ではあるが、病気が進行する中で両親がこの決断に至る過程も回想として丁寧に描かれるので一応の説得力はある。琴美の妹夫婦の家で、その場のみんながもう知っているのに「琴美はね、パリにいるんだ」とつぶやき続ける一志の姿が切なかった。

大志が旅先で出会う人たちがいい。
大志の心の中は「なぜ母は嘘をついているのか、なぜ父もそれを教えてくれないのか」という不安でいっぱいだ。それをはっきりさせたい思いが、横浜から小豆島までという途方もない旅に臨む彼を支えている。
そしてその旅先で出会う人たちもまた、何かしらの嘘に傷付く人たちだ。恋人に裏切られた若い女、父に捨てられた小料理屋を営む母娘、息子と上手くいかず自殺を図る老人・・・。大志の身の上話に対して彼らは容赦ない。「好きだから付かなきゃならない嘘だってあるはず」という大志に、「嘘をつくのはもう嫌いになったからだ」と突き放す面々。
しかし、彼らそれぞれと共に過ごすわずかな時間の中で大志の思いは彼らを救い、逆に彼らの思いも大志を救う。偶然の出会いは、別れるときには再会の約束を交わすまでになる。

そしてついに母親と向かい合うことになる大志。会いたい一心でひとりでここまでたどり着いた大志にとって、それはあまりに残酷な再会。

「この人誰?この人はお母さんじゃないよ!」

そして誰にも救いのないままのエンディングかと思ったとき、奇跡が起こる。キイロキラキラソウによって。


ラストで登場する鈴木京香の演技がすばらしい。病気で記憶も感情もなくし無表情な彼女の目に、生気がみなぎる一瞬がある。無表情無感情なままでのこの演技はやはりさすがだ。

あとはなんといっても大志役の武井証。いやあこの子には参った。この演技力。末恐ろしいとはこのことか。いや、この際彼の行く末は置いといて、いつまでも子役のままでいてほしいくらいだ。来月早々の彼の出演作も鑑賞予定なので、こちらも楽しみである。(そういえばこっちでも自転車乗ってるな〜)

相手を思うあまりの嘘が結果的に相手を苦しめてしまうのは悲しいことだ。でも、それでもその嘘をつきとおさなければならない約束があったとしたら・・・。
必ずしもそこにメインのテーマを置いた作品ではないが、嘘をつくことや約束を守ることについて考えさせらる作品であることも確かだ。

帰り道。川崎から横浜へ向かうJRの車窓からなんとなく黄色い花を探してみたが、意外にもほとんど見つからなかった。偶然にも鑑賞当日の「趣味の園芸」は夏の黄色い花特集だったのになあ。それにしてもこの区間、なぜかカンナを植えてるお宅が多いのね。うう、オレンジ・・・(笑)

 ☆『ぼくとママの黄色い自転車』公式サイト
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ぼくとママの黄色い自転車
新堂冬樹のベストセラー小説『僕の行く道』の映画化。監督は『子ぎつねヘレン』の河野圭太。とある事情で離れ離れになっている母を訪ねて子供が自転車で旅に出る、現代版「母をたずねて三千里」。主演は『いま、会いにゆきます』や、まもなく公開の『BALLAD 名もなき恋のうた』にも出演中の武井証くん。共演に阿部サダヲ、鈴木京香、柄本明ら個性派が揃う。 ...続きを見る
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『ぼくとママの黄色い自転車』
□作品オフィシャルサイト 「ぼくとママの黄色い自転車」□監督 河野圭太 □原作 新堂冬樹(「僕の行く道」) □脚本 今井雅子 □キャスト 武井 証、阿部サダヲ、鈴木京香、柄本 明、西田尚美、甲本雅裕、梅原真子、鈴木砂羽、市毛良枝、ほっしゃん。■鑑賞日 8月30日(日)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想> 武井クン、「いま、会いにゆきます」を観てからもう5年経ったのかぁ・・・。 ほぼこのブログを始めて5年が経つんだなぁ。 武井クン、多少あのころのあどけ... ...続きを見る
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