『空へ-救いの翼 RESCUE WINGS-』・・・航空救難における“最後の砦”

自衛隊の救難ヘリにスポットを当てた作品ということで飛行機好きとしては興味津々。しかし映画的には(あの手塚昌明監督ということもあって)いまひとつ食指が動かないという、まさに私を悩ませるために存在するかのようなこの1本。悩みに悩んだ末・・・・・・けっきょく初日鑑賞。ちなみに原作のアニメ、小説、コミック等すべて未見。

レスキュー物としては運悪く(?)『252-生存者あり-』が公開中、さらには『海猿』という過去のヒット作があるという状況で、派手なドンパチもなく壮大なサスペンスやラブロマンスもなくストーリーも正直ありきたりな本作に勝ち目はないと言いたいところだが、これがまた予想以上に見応えがあった。CGではなく実機を使った映像にとにかく迫力があり、起伏の控えめなドラマパートをしっかりカバーしていた。

F-15Jの訓練シーンなど、どうやって撮ってるんだろうと思うような見事なアングルの連続だったが、これについてはエンドロールで合点がいった。撮影スタッフの中に赤塚聡氏の名前があるではないか。航空ファンの方ならご存知の、元F-15パイロットという肩書きを持つカメラマンである。カメラプレーンとしてF-15DJ(複座のイーグル)を飛ばしたとのことだがなるほど、後席のカメラマンは赤塚さんだったのね。納得納得。

主役の機体は空自の救難ヘリUH-60J。いわゆるコンバットレスキューを考慮したダークブルーの洋上迷彩が精悍な印象を与える機体だ。私が仰天したのは機体の幅と大差ない防波堤への着陸シーン。主脚のタイヤが左右いっぱいいっぱいに見えたぞ。もちろん本職のパイロットの操縦によるものなのは言うまでもないが、いや~あれは驚いた!

残念だったのは後半の海自哨戒ヘリSH-60との編隊飛行。この空自機と海自機によるH-60ファミリーのフォーメーションも間違いなく見どころのひとつのはずなのだが、なぜかこのへんの映像が粗かったりボケたりしていた。またUH-60の窓越しにSH-60が見えるシーンはチープな合成・・・。ん~、予算尽きちゃったのか?(笑)
ただここでのパイロット間、あるいは護衛艦(DD102はるさめ)艦長との無線によるやりとりはよかった。こういうのに私は弱いのだ。海自さん、いいとこ持ってくねぇ(^^)v

主人公の女性パイロット川島遥風を演じた高山侑子は撮影当時15歳だったそうで、3尉の幹部自衛官役はさすがに無理があったか。ただ女優として今後が楽しみな逸材であるのは間違いないので大いに期待したい。
彼女の主役抜擢の理由には彼女の父親の存在もあったのだろう。公開前から話題になっていたことだが、2005年に起きたMU-2墜落事故で4人の自衛官が殉職されていて、そのうちの一人高山和士曹長(1階級特進)は彼女の父親なのだ。
新潟中越地震の際にもメディック(救難員)として救助活動に参加していたという亡き父の遺志を女優として継ぐことになった彼女。わずか15歳の少女にとってこのシチュエーションはかなり重かったに違いない。それでも演じる彼女の表情には父を思う誇りのようなものが時に見てとれたので安心した。

そういえば夕空の中を救難隊所属のMU-2が飛び去って行くカットの後に遥風がある人物からの手紙を読み涙をこらえる(流す?)というシーンがあったが、ここだけに登場するMU-2、やはり監督が思うところあって入れたんだろうなあ。あるいは折りしもこの10月で全機退役を迎えたMU-2そのものへのオマージュという意味合いもあったのかもしれない。

災害発生時、最終的に最も困難な現場に投入される空自救難隊は人命救助の“最後の砦”と言われるそうだ。現実の世界ではそのプロ集団の中にまだUH-60Jの女性パイロットはいないとのことだが、同型機を保有する海自救難飛行隊には既に機長資格を持つ女性パイロットが存在する。劇中の川島3尉のようなパイロットが空自に誕生するのももはや時間の問題であろう。

さて。この手の映画を鑑賞後、クルマに乗り込みエンジンをかけたあと劇中のパイロットたちよろしく「RTB」とつぶやいてしまう私は、やはりマニアのようである(笑)

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