『ワルキューレ』・・・悪魔に護られるヒトラーの強運

私たちの知る歴史においてヒトラーが暗殺された事実はない。だから冒頭で「TRUE STORY」と銘打たれる以上この作戦が失敗することは明白なのだが、それでも作戦開始からの手に汗握るスリリングな展開は存分に楽しめた。主演のトム・クルーズが若かりし頃に演じたあの海軍パイロット以上のハマリ役で、それだけでも観る価値あり。

北アフリカ戦線で地上部隊を指揮していたシュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)を襲ったアクシデント。突如飛来した連合軍P-40戦闘機の機銃掃射により重傷を負ったことが、後の彼の運命を変えることになる。
本国に戻った彼はオルブリヒト将軍(ビル・ナイ)らに誘われ、クーデター鎮圧のために用意される「ワルキューレ作戦」を隠れ蓑にしたヒトラー暗殺を画策する一派に参加。暗殺実行者として副官のヘフテン中尉(ジェイミー・パーカー)とともに大本営“狼の巣”へ乗り込むのだが、ここでの爆破計画はいくつかの不運に見舞われてしまう。

1.爆弾がその威力を発揮するはずだったシェルター状の会議室が使われず、窓のある普通の建物に変更されたこと。
2.爆弾の時限装置組み立て中に入室者があったことで、2個のうち1個をヘフテンがとっさに自分の鞄に隠してしまったこと。
3.それでもヒトラーの近くに置くことで暗殺可能と判断した爆弾入りの鞄を、邪魔に感じた会議出席者が足で移動させてしまったこと。

そして何より致命的だったのが、脱出を急ぐシュタウフェンベルクが爆発をもって暗殺成功と早合点してしまったことである。せめて会議室内の被害状況確認は必要だったのではないか。もっとも一発勝負の暗殺計画だったことを考えると、ここでヒトラーの生死を確認する意味はどの道既になかったようにも思われるが・・・。

一方彼らを待つベルリン組にも不運がつきまとう。
ヒトラー死亡を知ればレジスタンス側に付くと目論んでいたフロム将軍(トム・ウィルキンソン)の拒絶。本来の「ワルキューレ作戦」発動権を持つ彼を取り込めなかったことは大きい。土壇場でちょっとした躊躇を見せるオルブリヒトもちょっと意外だ。
しかしよく考えてみると「ワルキューレ作戦」発動により決起する各部隊は元々レジスタンス側と通じているわけではなくあくまで利用されるだけというのが、この暗殺から新政権樹立につながる計画の最大の欠陥だったように思う。フロムの名を騙りオルブリヒトが作戦を発動するが、数人の首謀者が既存の作戦を使って多くの兵を動かそうというこのアイデアはヒトラー生存の情報が流れた時点で終わりなのだ。
通信網の遮断や放送施設の占拠が上手くいかなかったことなど、なにかこう綿密に練られた作戦のようでどこかに詰めの甘さがあったような、そんな印象を受けた。

同時にヒトラーの悪運の強さも思わずにはいられない。もはや神ではなく悪魔の加護を受けるかのような狂気の独裁者。私は知らなかったがヒトラー暗殺計画は一つや二つではなかったそうで、その中を自ら命を絶つまで生き続けたこの男の強運は、神がかり・・・いや悪魔がかりとしか言いようがない。

ただ、成功には至らなかったものの当時のヒトラー政権下にあってこうした活動を進め続けた一派がいたことには正直ホッとする思いだ。仮にヒトラーが早期に暗殺されていたとして、今の世の中にどれほどの影響があったかはなんとも言えないが、少なくとも第二次大戦におけるヨーロッパでの戦いの終結が早まった可能性は高い。ユダヤ人大量虐殺回避も含め、救われた命は多かっただろうに・・・。

まあ歴史に“もしも”を考えてたらキリがないのは承知だが、ヒトラーのいる室内で爆弾を炸裂させたにもかかわらず失敗に終わった暗殺計画に、そんな“もしも”を考えながらの帰り道となった。

以下余談。
高校時代に組んでいたロックバンドの名前が「ワルキューレ」で、社会人になってすぐに参加したポップス系バンド名が「トップガン」。これ私にとってはトムつながりのなかなかの偶然なのだが、うーん、やはり余談かこりゃ(汗)

 ★『ワルキューレ』公式サイト

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