『2012』・・・襲い掛かる国威の象徴

地球滅亡を描く作品のアイデアの限界を感じた。ディザスターの名手エメリッヒ監督といえど、さすがにもうネタ切れなのかもしれない。中味は薄っぺらで延々ひたすら映像勝負の2時間38分。後半は正直キツかった(汗)

この手の作品は、まずきっかけとなる予兆が提示される。それは地下マグマの異変だったり、太陽の異常だったり、隕石や彗星の接近だったりする。そうした地球を脅かすサインに学者もしくは政府関係者が気付き、かの国が当然のごとくリーダーシップを執り、人類存続の未来をかけたプロジェクトが極秘裏に発動されるという展開だ。

太陽系惑星直列のシーンでスタートする本作も完璧このパターン。ただし鑑賞前にはひとつの期待もあった。マヤ文明の予言する“2012年世界の終わり”を滅亡のタイミングに合わせたことである。科学で立ち向かわんとする人類の姿に謎の多い文明ゆえの神秘的あるいは宗教哲学的な空気が絡まってのスペクタクルとなれば、マンネリ化の否めないこのジャンルにあって新しい何かを見せてくれるかもしれないと。

ただし宗教色を絡めたことで好き嫌いがはっきり分かれてしまったディザスター作品の存在も記憶に新しい。『ノウイング』である。私はラストのオチを良しと評価したが、あれで萎えたという感想も当時数多く拝読した。
しかしそこはディザスターのエメリッヒのこと。3時間近い本作に何かしらの新機軸を盛り込んでくれると、そんな一縷の期待があることはあったのだ。(ダメダメな予感のほうが強かったことは認めるケド・・・)

映像はすごい。たしかにすごい。道路が建物が、そして街がじわじわと、あるいはあっけなく崩壊していく脅威の映像は掛け値なしに過去最高のスケールで大迫力だった。巨大な津波に山まで動くという天変地異は驚愕もの。街そのものが地盤ごと持ち上がって・・・というのがあり得るのかどうなのかはともかく・・・。

地面が割れ、ビルや高架が崩れ落ちる中を車で駆け抜けるという定番描写も過去の同類作品に比べると迫力は上だ。そしてそれをそっくり3次元、すなわち空中でやってのけるというあまり例がない飛行機での“かいくぐり”描写も手に汗握らされた。
毎度ながら飛行機ネタに脱線するが、いつも注目する主翼後縁のエルロンの動きと機体のロール機動のタイムラグ感が妙にリアル。舵面操作量が不自然なほどに大きいのは、にわかパイロットのゴードンが機体の反応を待てずに操縦桿を左右にフルストローク動かし(ちゃっ)てるからと思われ、そんな彼の必死な様子が目に浮かぶようだった。

と、映像は満点かそれ以上を付けてもいい代わりにストーリーがどうにも・・・。
目新しい展開は何もないうえに、せっかく複数登場する家族を使ってどうせならとことんお涙頂戴にすればいいのに、それもどっちつかずの中途半端。前述の期待に関連するはずのチベットの僧侶やウディ・ハレルソンの役どころもやっぱり中途半端。アメリカ大統領やイタリア首相の勇気ある決断も取り上げ方が中途半端。

ネタバレになるが、主要キャラの中でゴードンとタマラの最後がかわいそう過ぎ。そこに至るまでに人間関係などを見せておきながらあっさりと・・・。タマラなんてジャクソンの娘を間一髪助けてるのに、いなくなっても誰も気付かず騒がない。てか監督も忘れちゃったんじゃないのか。
ゴードンもケイトがちらっと悲しむだけ。経験がほとんどないのに双発レシプロ機を操縦し、それどころか世界で最も重いギネスものの巨人機アントノフAn225(機体には「ANTONOV 500」とペイントされていたり、なぜか機首ではなく後部にカーゴベイが配されていたので、225がモデルの架空機だな)のコパイ席にまで座らされた彼。一行が方舟までたどり着けた一番の功労者は間違いなく彼なのにねぇ。監督そのことも忘れちゃったのか。


ちょっと穿った見方になるが、エメリッヒ監督は正義の強国アメリカの象徴がまるでこぶしを振り上げ襲い掛かるような、そんな派手なぶち壊し映像にこだわったのかなという印象を持った。

例えば空母。たった1隻で小国の軍事力に匹敵する攻撃力を持つとされ、アメリカ海軍各艦隊の要である。劇中では津波に運ばれたUSSジョン・F・ケネディ(CV-67)がホワイトハウスを押し潰す。2009年時点ですでに退役艦である“ビッグ・ジョン”が2012年になぜ艦載機を甲板に載せた状態で海上にあったのかは不明だが、国威の象徴がアメリカ合衆国の象徴そのものを押し潰すのである。

そのワシントンDCでは、大統領が驚愕の表情でモニュメントの崩壊をなすすべもなく見つめる。ワシントンの象徴が大統領の目前に倒れるのだ。

そしてつい先日もオバマを乗せ羽田に飛来した大統領専用機エアフォースワン。これもまたアメリカの国威を象徴するかのような特殊航空機。空港に乗り捨てられた形になっていたこのボーイング747が津波とともに押し寄せ、主人公たちの乗る方舟を容赦なく傷つける。

アメリカと仲良しの国、わが日本の最期もあっけない。日本の様子を確認するシーンによると“東京は大地震に見舞われ、国家の70%が水没”したそうで、ようするに日本沈没である。

エメリッヒ監督は本作をもってディザスター映画を終わりにすると公言しているようで、こうしたアメリカの“壊し方”を通して、「世界が壊滅してもなぜか生き残るアメリカ」というありがちな設定に自身で終止符を打ったということなのかもしれない。


すっかり一変した新しい地球。洋上に静かに浮かぶ方舟たち。2012年で西暦が終わり新たな紀元がスタートした平和な光景でのエンディング・・・ってちょっと待て!う~ん、これもなんだかしっくりしない。
南極北極が大きくずれた上にひっくり返ったという描写もあった。実際に地球がゴロンと転がったわけではないにせよ、自転軸の傾斜やその周期などにも大きな影響が出ているはず。環境の激変というあらたな試練は避けられない。それこそ監督が『デイ・アフター・トゥモロー』で描いたような現実が待っているかもしれないじゃないか!

隆起によりヒマラヤより高くなってしまったアフリカを方舟船団は目指すのだが、「喜望峰へ向かうことがまさに我々の希望だ」などと言っちゃってる船長さんと、友をそして父を失いあんなに悲しんでたわりにのん気にいちゃいちゃしてるあの二人組を見る限り、やはり地球は滅亡したのである(笑)

CG映像は大迫力にして圧巻。車と小型飛行機で逃げ惑うシーンもヒヤヒヤの緊迫感。
でも残念ながらそれだけの作品。ジョンキュー神話も崩れたし、まあ期待の方向性を間違わなければ楽しめるかな。

そういえば『西暦2万年』はどうなった・・・・ああ、あれはギメリッヒ監督だった!(わかる人笑ってネ)

 ☆『2012』公式サイト

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