『ソルト』・・・アンジーの魅力は堪能したけど

既存のスパイ・アクション映画に比べると重くて切なくて、その中を駆け回るアンジーはやっぱり美人でカッコよくて・・・。
でもどこか乗り切れない、そんな作品だった。作風や世界観は気に入ったのだが。

アンジー演じるCIAエージェントのイヴリン・ソルトは、ある男の持ち込んだ情報によりロシア人スパイの疑いをかけられる。「誰かに嵌められた。このままでは夫が危ない」と主張するソルトだが、同僚たちから追われる身になってしまう。

前宣伝で謳われたのは「誰がソルトなのか?」、「彼女は何者なのか?」、そして「あなたは見抜けますか?」といったコピー群で、たしかにその逃亡劇を通して彼女の正体が二転三転するのだが、私にはこの展開がどうも心地よくなかった。
彼女の真意や目的がどこにあるのかがはぐらかされっぱなしで、その場その場での彼女の行動が、愛する夫を思ってのことなのか、CIA工作員としての信念によるのか、あるいは発動した“X-デー”に基づき任務を遂行する姿なのか、わかりにくかったように思うのだ。ずっとモヤモヤした感じとでも言おうか。

そのあたりのポイントとなるはずなのがかつての養成所仲間のアジトへ赴くくだりで、ここで起こる最愛の夫との再会と悲劇が彼女を“静かに”激高させることになるのだが、おそらくは感情を押し殺したスパイならではのポーカーフェイスがアンジーに要求されたのだろう。しかしここではいっそ感情むき出しのソルトを一度見せておいたほうが、その後のホワイトハウス潜入時の彼女の心情などがよりはっきり伝わってよかったんじゃないかなあ。で、そのまま黒幕との対決という図式につながるし。
・・・ちなみにこの黒幕さん、それこそ最初からかなり胡散臭いのでそっち方面でのサスペンスはあまり期待しないほうがいいかもしれない(笑)

私の感じた心地悪さやモヤモヤ感は、作り手側にすれば二重スパイゆえの混沌さ表現であって、それこそが本作でのソルト像なのかもしれない。それは納得だし別に中盤ずっとこのモヤモヤ感があってもいいと思う。しかしその手のモヤモヤは並べた分だけ回収してくれるような配慮が最後にないとな~。
例えば最初にCIAの拠点から脱走を図る時など、応用爆破術の知識を駆使してあっという間に手製のグレネード・ランチャーを作ってしまうのだが、少なくともあの時点であれをぶっ放すほどの動機付けが私にはさっぱり見えないのだ。後に情報提供者の素性が明かされることでこの時の彼女がこれから起ころうとしている事態や夫の危機を察知したことは理解できるのだが、逆に感情移入しにくくなってしまう。

結果的に彼女はロシアとアメリカ両大統領の命を救ったことになり、少なくとも同僚の一人にはそのことも理解されてのエンディングとなるが、ラストは再びの逃亡劇で幕を閉じる。これはもう続編への序章ということで間違いないだろう。背景にあるX計画もケネディ暗殺事件にまで遡るという壮大な謀略らしいので、この世界観を継続しての今後の展開に期待したい。

冷戦時代の米ソの駆け引きと裏側で繰り広げられていたであろうCIAと旧KGBの諜報戦が、現代のアメリカとロシアの関係にまだ影響を及ぼしているという設定は個人的にかなり気に入った。(内容的には関係なかったが、かつての米ソの核兵器制限交渉「SALT」を連想した方も多いんじゃないだろうか)
その状況に振り回される敵味方の諜報工作員たちのドラマもまたなかなか見応えがあった。その一方で前述したようなせっかくのヒロインに感情移入しきれないモヤモヤ感が付きまとったのは非常に残念。面白いスパイ映画は戦う主人公にいつの間にか感情移入しているものである。

もちろんアンジーが見せる演技・アクションそして美貌については相変わらずの魅力炸裂で、ほんとこの人は何をやっても絵になるパーフェクトな女優だなとあらためて思った。序盤の朝のシーンでは、おなじみの姐さんイメージを払拭するような最高に愛くるしい笑顔まで披露してくれたし~♪
ただ、単に“アンジーがよかった~!”で済ませるにはあまりにもったいない作品なだけに、今回はあれこれと注文が多くなってしまったようだ。


以下余談。

最近映画を観るたびに不憫に思ってしまう墜ちまくりのヘリ、UH-60ブラックホーク。今回は哀れポトマック川に沈むのかと覚悟して観てたら、サイドドアの緊急投棄だけで機は無事だった。墜ちなくてよかったねぇ(笑)

ついでに飛行機ネタをもう一つ二つ。

劇中ソルトが某人物とともに移動に使う飛行機がイタリアのP180アヴァンティ!
うわ~珍しいなあこれ。
その昔デモンストレーションのため日本へ飛来したアヴァンティを仕事で見学する機会に恵まれたことを思い出した。初めて見るプッシャー式ターボプロップ機の姿に若かりし日の私は衝撃を覚えたものである。いやあ懐かしいものを見せてもらいました。

旧ソ連スパイ養成所の回想シーンでちらりと映る飛行機のおもちゃが、ミグやスホーイでなくF-15イーグルだったのも印象的。英語やアメリカの文化などを叩き込まれる場なのだろうからまあ当然なんだけど、わざとらしくアップになったのはやはり意図的な演出なんだろうな。

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