『英国王のスピーチ』・・・かくして優しき善良王は誕生した

幼少期のトラウマによる吃音コンプレックスと内気な性格。時のヨーク公バーティ(コリン・ファース)が、一人の友と妻の愛とに支えられながらこの苦しみを克服し、ジョージ6世として国王の座に着くまでを描く物語である。

鑑賞にあたりいろいろ調べてみたのだが、ジョージ6世の言語障害と妻エリザベスの内助の功、そしてエリザベスが見つけ出した治療の専門家ライオネル・ローグの存在など、いずれも事実に基づいているようだ。
となれば本来もっと深刻なストーリー展開になりそうなところだが、本作ではユーモアもふんだんに散りばめられているのでさほど悲壮感はなく、むしろ笑顔でバーティを応援したくなるような雰囲気に仕上がっているのがいい。

英国王室が舞台ということでコリン・ファースとヘレナ・ボナム=カーターは、もうこの二人しかないだろってくらいにハマリ役。実際二人にとってもさぞかしやりがいがあったことだろう。
コリンの“しゃべれない”演技も素晴らしく、まるで顔面に脂汗がみるみる滲んでくるのがリアルに見えるかのような迫力があった。
この二人と共に圧倒的な存在感を見せるのがローグ役のジェフリー・ラッシュだ。臆することなくはっきりものを言うこの男にバーティは徐々に信頼を置くようになり二人は固い友情で結ばれていくのだが、この型破りのセラピストを演じるジェフリー・ラッシュがまた巧いんだなあ。
必死の思いで演説に臨むバーティをしぐさや表情で優しくリードしていく様子に、キャプテン・バルボッサの面影など微塵もない(笑)

見せ場であるクライマックスの演説が、ドイツとの開戦を国民に告げるものであることに複雑な思いもよぎるが、演説後の彼の晴れやかな表情、そして妻や娘たちの笑顔は心地よい感動を呼ぶ。あのオチビちゃんたちのお姉ちゃんのほうが現在のエリザベス女王だということも感慨深い。

本作は徹底して王室の内部事情のみを見せる。だからこそ唯一の民間人であるローグ夫妻が引き立つわけだしそれはそれでよくわかるのだが、第二次世界大戦当時に国民から「善良王」と親しまれたという彼なのだから、そのあたりのエピソードを国民の視点から描くような場面があってもよかったのでは、とも思った。

『ソーシャル・ネットワーク』と並び本年度アカデミー賞の本命と目される本作。その発表もいよいよだ。少なくともコリン・ファースは決まりとみて良さそうな気もするが、さて結果やいかに。


2011/2/28 追記

第83回アカデミー賞において、作品賞、主演男優賞(コリン・ファース)、監督賞(トム・フーパー)、脚本賞の4部門受賞!

Congratulations!



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