『コンテイジョン』・・・接触感染の恐怖

ウィルス感染のパンデミック映画に何を期待するかで評価や感想が二分しそうな作品であった。

発症から感染拡大に至る経緯を軸として描きながら、患者、役人、警察や軍、科学者、医療関係者といった人々それぞれのドラマを絡め、その背景に製薬会社の陰謀やら軍事機密やらを設定したうえで、ホラーやサスペンスに振るか、あるいはSFやアクション系の味付けをする・・・とまあこの手の作品の基本はこんなところだと思う。
『バイオハザード』シリーズ然り、『アウトブレイク』然り、『感染列島』然り。数年前NHKで放送されたドラマ『パンデミック・フルー』も私にはインパクトある作品だった。

ただ本作『コンテイジョン』がこうした同系作品と決定的に違うのはその独特の緊迫感である。迫り来る感染の恐怖を、あえてテンションを抑えながら淡々と描いている印象なのだ。感染モノ特有の煽り立てるような騒々しさがない。
そのあたり、観ていて物足りなさを感じもしたのだが、同時にゾクリとするようなリアルな怖さも伝わってきた。

ウィルス系バイオハザード物はこれまでにも傑作があるが、発端・パンデミック・終焉という基本構成に変わりはないはず。あとは人間ドラマとしての見応えや、科学・医学的観点でのリアルさとウソっぽさ(どちらも必要だ)のバランス次第で面白さが決まると思う。

『感染列島』の感想記事の中で私はこう書いているのだが、本作にウソっぽさは皆無。感染者や遺族におおげさなドラマを与えず、CDCやWHOの医師たちもあくまで地道な活動を続けながらウィルスに立ち向かっていく。誰かが突出して主役を張るわけでもなく、死ぬべき人はあっさり死に、嫌なヤツは地味に嫌なヤツのままで、功労者もあくまで裏方であり表舞台のヒーローとはならない。ローレンス・フィッシュバーン率いるチームは、ミラジョボやダスティン・ホフマンや檀れいのようには描かれないのである。

そんな中でワクチンを巡るトラブルから拉致されてしまうWHOの女性医師のエピソードだけは違う雰囲気を感じた。自身の解放と引き換えに渡されたワクチンが偽物であると知り表情を変え席を立つ彼女・・・。淡々と進む物語の中、ここだけが本筋とは無関係ながらいろんな意味で胸を打つシーンであった。


第2日目から始まる物語の最後に描かれるのが第1日目。
WHOが突き止めた第一感染者のベスがそもそもなぜ感染したのかが最後の最後で明かされる。大企業の重役である彼女に最初のウィルスをもたらしたのは・・・。いやはやこのオチのなんとも皮肉なこと。

ドアノブ、つり革、握手・・・。
当たり前の日常生活に潜む接触感染の恐怖。マメに手を洗うくらいではもはや防げそうにない。そんな気がしてきた。


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