『TIME/タイム』・・・歪んだ“適者生存”の原理

まさに“時は金なり”が具現化された近未来。人々は25歳で成長が止まると同時に左腕の“時計”が起動し、残り寿命のカウントダウンがスタートする。
この世界の通貨は金ではなく時間なのだ。人々は生きるために時間を稼ぎ、コーヒーを飲むのもバスに乗るのも、支払うのは時間。収支にあわせ腕に刻まれる余命も増減するようになっていて、半永久的な時間を持ち豪華な生活を送る富裕層と、日払いされる時間でとりあえずその日その日を生き延びている貧しい人々との格差社会が広がっている。

時間がお金として使われているというなんとも奇抜なアイデアの架空世界でありながら、観ている人をすんなりと引き込んでしまうだけの説得力はあったと思う。背景にあるはずの政治や経済や科学や医学や遺伝子云々の話はともかく、少なくともこの世界観についての設定には入り込みやすかった。
25歳になったときを見据えてコツコツと小銭ならぬ小時間を貯めている少女や、親しい者同士で持ち時間のやりとりを交わす何気ない風景など、なるほどな、そんな感じなんだろうなと思わせる描写がいい。

そもそもSF設定の些細な矛盾は突っ込むより受け入れたほうが作品を楽しめるというのが私の持論であり、昨年一昨年あたりから急増する“日常B級SF”作品同様に評価してあげたい一本ではある。

あるのだが・・・・・どうしても違和感を覚えたのが残り寿命の少ないときの当人たちの平静さ。

例えば急な運賃値上げでバスに乗れなかったお母さんの悲劇にしても、乗車前の彼女の腕に刻まれた残り時間は1時間30分。値上げ前でも残りはわずか30分になってしまうのだから、走ることになろうがなるまいが、もっとアセるのが自然ではなかろうか。他にも登場してくる余命が数分、数十分しかない人々の心理状態がどうも不自然に感じた。せっかく入り込めた世界観だったのに残念。もっと切迫してるんじゃないかなあ?


ストーリーにしても、中盤以降おかしな展開になってしまった。反体制思想のスラム出身青年と、彼に惹かれた箱入りお嬢様。そんなふたりの逃避行まではいい。タイムキーパーなる警察組織に追われる微妙な関係の男女ならではの逃避行だ。『アイランド』や『普通じゃない』といった私のフェイバリット・逃避行ムービー(笑)に並ぶかと期待したのだが・・・。

銀行強盗の目的がブレてしまうのがイタイ。
永遠の命を持つことの辛さを訴え自ら命を絶った男。あと数秒あれば死ぬことのなかった母親。時間目当てのギャング団。慣れない高収入が死につながった友人。死体が路上に転がるありふれた日常。

歪んだ適者生存の原理。

そんな世界を壊すべく青年は二つのゾーンの境界を突破したのではなかったのか。銀行強盗によって莫大な時間を一度に動かし、経済の混乱を起こそうとしたのではなかったのか。義賊となったのは単なる結果に過ぎないのだろうが、ラストシーンの二人はもはや銀行強盗そのものに生きがいを見出してしまったかのようだ。いっそ感動の義賊話にしたほうがまだマシだったかもしれない(汗)

逃避行の過程は同時にピュアなラブストーリーでもあった。だが、もはや当初の目的はどこへやらの強盗カップルになってしまったこのふたりの最期は、案外ボニーとクライドと同じことになるのかもしれない。

「“君”たちに明日はない」


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