『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』・・・“I Have a Dream 私には夢がある”

第84回アカデミー賞において4部門(作品・主演女優・助演女優・助演女優)にノミネートされ、ミニー役のオクタヴィア・スペンサーが見事助演女優賞を受賞した本作。60年代アメリカの人種差別問題という重いテーマを描きながらもその作風はコミカルで力強く、希望や温かさにあふれる好印象の一本。

黒人メイドの存在を白人女性たちがどうとらえているのか、ここに登場人物それぞれの個性があるのが興味深い。若い女性のリーダー的存在であるヒリーとその一派のように何が何でも黒人を差別しようとする世論がかの国を支配していたのがこの時代と思いきや、必ずしもそうでもないのだ。
自分の家で働いていたメイドを慕い、その消息を案じる作家志望のスキータや、そもそも何の偏見も持ち合わせない天然キャラのシーリア。彼女たちの自然な振る舞いは黒人メイドたちとの間に確かな友情を育み、ついには立ち上がるメイドたちの勇気へとつながっていく。料理を覚えたくて夫に内緒でミニーを雇ったシーリアの“恩返し”の場面は思わず涙腺が緩んだ。

スキータの母親がヒリーを一喝する終盤のシーンもインパクトあり。成り行きでメイドを解雇してしまったことへの後悔や懺悔の念、なによりメイドという存在に対する彼女の本心が娘スキータに伝わる名場面であった。


ヒリーの友人エリザベスの家で働くエイビリーンに懐くエリザベスの幼い娘の姿からもわかるように、純真無垢な子供にとって肌の色の違いに興味は抱いてもそこに差別の心は芽生えない。やさしく語りかけ抱きしめてくれる存在こそが子どもにとっての母親なのである。
そう考えればスキータのような感情こそが当たり前の気がするのだが、ヒリーやエリザベスたちはいつからああなってしまったのだろう。

「私たちが育てた子供たちが大人になって私たちを雇うのだ」

メイドたちのそんな言葉がとても印象的だ。心から愛情を注いだ子供たちがやがて自分たちを支配する側に回る日が来る。小さく柔らかい身体を抱きしめながら彼女たちは何を思ったのだろう・・・。


黒人差別問題が一つの大きなテーマながら、同時に様々な差別も本作では描かれる。職場における女性差別、集団での仲間外れ、肉親への冷たい仕打ち等、そうした渦中に置かれる登場人物たちが織りなすドラマであることで主題自体が一層盛り上がってるようにも感じた。


すべてがハッピーエンドとは行かないあたりディズニーらしからぬクールな終わり方ではあるが、未来の可能性すなわち私たちが生きる現在への希望を明確に予感させるエンディングはお見事。
鑑賞前に抱いていた悲壮感のようなものはほとんど感じることなく、それでいてテーマの重さはしっかりと伝わり、そのうえで散りばめられるユーモアに笑わされながらの2時間半。もう少し短くてもよかったかなと思わなくもないが、かと言って途中飽きが来ることもなく派手なアクション皆無にしてのこの見応えには大満足。

「I Have a Dream」

中学の英語の授業で聴いたキング牧師の演説が突然よみがえってきた。
公民権運動の時代を背景にした本作。虐げられていた黒人たちが各地で立ち上がった勇気の一端がここにもある。





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