『バトルシップ』・・・現用駆逐艦が魅せる迫力の洋上バトル

各国海軍が参加するリムパック(環太平洋合同演習)の海域にエイリアンが出現したらどうなるか。ありそうでなかったこのアイデア。こいつは面白そうだ。なにしろリムパックには空母やイージスや潜水艦を含む数十~百隻近い戦闘艦が集結しているのだ。
過去の軍隊VSエイリアン映画とは規模が違う迫力の戦闘シーンの予感に期待を膨らませつつ劇場へ。

うわー、オモシロ過ぎ~!!

結論から言うと、私の期待した多数の艦艇入り乱れての戦闘シーンはなし。なのにこの迫力、この見応え!
エイリアン側が張ったバリア内に閉じ込められたミサイル駆逐艦三隻(米海軍DDG-53 ジョン・ポール・ジョーンズ“JPJ”、DDG-102 サンプソン、海上自衛隊DDG-175 みょうこう)と、退役し記念館となっている戦艦一隻(BB-63 ミズーリ)。エイリアンの巨大メカ群に挑むのはこのわずか四隻のみなのだ。いわば結界の中での限られた戦闘であると分かった最初こそ正直萎えたのだが、いやいやどうして、これがまた最高に面白かった!
私の大好きなあの監督(笑)が得意とする、数に物言わせたりこれでもかの爆破や破壊はなくても迫力は描けるし、また伝わるものだと本作で思い知らされた。むしろそういう要素を適度に絞ったおかげで裏表で進行するドラマなり各エピソードがきちんと意味を成してついてくる感じで、なんというか映像の見応えとストーリーの見応えと、その両方で楽しめるこれぞエンターテインメントという印象である。

最初に提示されるそれっぽい宇宙話で興味を引かせ、主人公アレックス・ホッパーの海軍入隊に至るエピソードでは笑いを誘い、米海軍と海上自衛隊のライバル・友好・協調といった関係をアレックスとナガタのやりとりでわかりやすく見せていく。ナガタを演じる浅野忠信の日本語での罵声の数々は必聴(笑)

救助されJPJに乗艦してきたナガタの的確な指揮判断を認めたアレックスが、彼にJPJ艦長の席を譲るシーンが清々しい。生存者の中で最上位階級だったため当初JPJの新艦長に指名されたアレックスだったが、戦う敵はマニュアル通りにはいかない未知の存在なうえ、イージスシステムの要であるSPYレーダー(艦橋に4基ある八角形のフェイズドアレイレーダー)も沈黙。大尉の彼にはさすがに艦長の任は重かろう。その点ナガタはみょうこう艦長であり階級も1佐(大佐)だ。譲るアレックスと受けるナガタ。二人の間に固い絆が結ばれる。

ところでこのふたり、過去に何やら衝突があり確執が残っているようだったが、かつて現実のリムパック中に米軍のA-6イントルーダー攻撃機を自衛隊のDD-153 ゆうぎりが誤射、撃墜してしまった事故があったのをご存じだろうか。このA-6、よりによってCAG機(隊長機)だったので、以来米海軍と海自の間の遺恨としてリムパックのたびに何かしらのトラブルが起きてやしないかと、で、本作序盤でのこの二人のぶつかり合いこそがまさにその表現なのではなかろうかと、あれこれ余計なことを考えてしまったマニアな私。

閑話休題っと。

迫力の洋上戦闘と並行してスリリングに描かれていくのが、島内でエイリアンたちに遭遇してしまう面々の活躍だ。両足義足の陸軍士官、そのリハビリハイクに同行するアレックスの恋人サム、そして二人に合流してくる島の研究員。最終的に彼ら島組と洋上戦闘組との連携が勝機につながるのだが、この展開も面白かった。
バリアの外にもドラマがある。危険が大きくて戦闘機を飛ばせないでいたシェーン提督が、戦闘機発進を急かすペンタゴンに向かって放った「じゃああなたがここにきて戦闘機の後席に乗って飛んでみろ!」は強烈だった。ここ、出番少な目リーアム・ニーソンの見せ場のひとつ!

エイリアンや母船・兵器の姿かたちをなかなか見せないじれったい作品と違い、本作ではエイリアンも彼らの兵器も早いうちからバンバン出てくるので実に心地よい。演出としての効果を超えるような過度のもったいぶりは観客のイライラをつのらせるばかりなことをピーター・バーグ監督はちゃんとわかってらっしゃる。

ミリタリー作品としての見どころも満載。
海自の実在イージスである「みょうこう」が、ハリウッド映画において一発ではあったがOTOメララ速射砲の射撃を行ったことにまず感激。しかも「おらおら~ぶっ放すぜ~!」的な(本作での米軍的な)射撃ではなく、あくまでJPJ援護という立場をとったあたりに監督以下制作サイドの我が国に対する配慮が感じられて好感を持った。
JPJの奮闘ぶりもすさまじい。Mk41VLSから続々撃ち出されるのはスタンダードかトマホークか。敵から撃ち込まれる特殊爆弾を迎え撃つバルカンファランクスCIWSも強力な弾幕を張る。(こいつがA-6を撃墜しちゃったのだ)
後半の戦闘では魚雷も撃ってたね~。

しかしなんといっても極めつけはBB-63 戦艦ミズーリの雄姿!
戦艦という前世紀の遺物を最後の切り札として動かそうっていうんだからびっくりだ。もっとも太平洋戦争以後再就役に際し近代化改修を受けているので、当然各種ミサイルやCIWSも装備しているミズーリだが、それでは映画的に面白くない。
そんな判断があったかどうかはともかく、ミズーリの攻撃は主砲の一斉射撃。9門の16インチ砲が吠える。ミサイルや航空機の出現により主力の座を空母や駆逐艦に奪われた往年の名戦艦が、世界を救うべくエイリアンに立ち向かう。こうなりゃ大艦巨砲万歳だ(笑)
現役の若い兵士に檄を飛ばしミズーリを動かすのはかつての海軍軍人たち。そんなじいちゃんたちがまたカッコいいんだな。

クライマックスは二者択一の緊迫感。最後の砲弾を自艦防衛に使うか、エイリアンが占拠した通信基地破壊に使うか。
アレックスとナガタの自己犠牲の決断は微塵も揺るがない。彼らが狙うのは通信基地。これでエイリアンたちの母星への通信手段は断たれた。そのかわりミズーリーに降り注ぐ敵の砲弾・・・。
これを間一髪撃破するのがCVN-76 空母ロナルド・レーガンから発進し、破れたバリア内に突入してきた2機のF/A-18スーパーホーネット! 
ああ、やっぱりスパホはカッコええのう~。てか映画に出てくるF/A-18は、スパホもレガホも何故に皆カッコいいのだろう・・・(溜息)


ハワイ沖や真珠湾が舞台であること。
戦艦ミズーリが登場すること。
海上自衛官が米海軍駆逐艦の指揮を執ること。
米軍退役軍人が実戦参加すること。

考えてみるとこれらはアメリカ人にとっても日本人にとっても何かしらの複雑な思いを抱かせる要素である。思えばマイケル・ベイの『パール・ハーバー』では反日思想が見え隠れし、そのためか日本公開用に追加されたシーンがあったりもした。真珠湾にはある種のタブーがどうしても存在するのである。
そういった難しさを本作は巧みに、というかごく自然にクリアしている点でもおおいに評価したい。これからGWにかけてさて何を観ようかと迷ったなら、洋画に関してはとりあえず本作『バトルシップ』を選べば間違いなし!

あ、そうそう。エンドロール後のユルくてコワ~いB級感全開のエピローグがまたイイのだ(笑)



※艦船用語の誤用があちこちで見受けられるので以下にさらっとまとめてみました。興味のある方はどうぞ。

本作中盤で活躍する艦はミサイル駆逐艦(DDG)。ミサイル駆逐艦は防空能力を高めた駆逐艦で、その最たる艦がいわゆるイージス艦である。これらの駆逐艦が現在の海軍の主力であり、戦艦(BB)を運用する国はすでにない。海上自衛隊では護衛駆逐艦(DE)、駆逐艦(DD)、ヘリ搭載駆逐艦(DDH)、ミサイル駆逐艦をまとめて“護衛艦”と呼んでいる。
(余談だが先日の北朝鮮ミサイル発射騒動で話題になったSM-3は弾道ミサイル迎撃用の艦対空ミサイルで、劇中登場したDDG-175 みょうこうも同ミサイルを装備、同型艦のDDG-174 きりしま、DDG-176 ちょうかいと共に北朝鮮ミサイルの破壊措置命令に基づく迎撃任務に就いた)



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