『サンシャイン・クリーニング』・・・がんばれ“負け犬”

思っていたほど深い人間ドラマはなく、むしろ軽快なタッチで姉妹とその家族の日常を描く作品だった。そういう意味では期待ハズレともいえるが、表と裏の顔を使い分けながらそれなりに一生懸命生きているローコウスキ家の面々に共感できる部分もあったせいか、観後感はなかなかよかった。
90分少々という短い尺の中で描かれる軽めの笑いと軽めのほろりとが、私にはちょうどよかったようだ。

ある人物の紹介により、普通のハウスクリーニングから犯罪や事件現場専門のクリーニング業に路線変更したローズ(エイミー・アダムス)とノラ(エミリー・ブラント)の姉妹。
しっかり者だがどこか冴えない姉のローズは、学生時代の仲間たちに対し常にコンプレックスを持つ。結婚や出産、あるいは仕事において、当時は地味だった友達のほうが華やかな人生を送っていることが受け入れられないのだ。
妹のノラもどこか自虐的な人生を送っている。バイトは長続きしないし、なにやら怪しい仲間たちとの交友もある。
二人の父親ジョー(アラン・アーキン)も、ローズの息子を連れいかがわしい商売に出掛けていく毎日。

こうして社会から落ちこぼれてしまっているこの家族だが、気持ちいいのはそれぞれが投げ遣りになることなく一応前を向いて生きようとしていること。自暴自棄に陥るような態度を見せることもあるが立ち直りも早い。文句も言うしヤケにもなるけど、彼女たちにはそのたびに少しずつ進歩があるのだ。

姉妹には幼い頃目の当たりにした母の死が強烈なトラウマとなっていて、それがフラッシュバックによって徐々に明かされていくうちに、いつしか私はすっかり感情移入してしまった。
特にノラが死亡者宅の清掃中にその女性の娘の写真を見つけ、「捨てちゃいなさい」というローズに内緒でその娘を探し出し・・・のくだりとその顛末にはほろりとさせられた。
母の死について姉よりはるかに深い心の傷を負っているらしい彼女にとって、他人と言えど切れ掛かっている母と子の絆はどうしても繋ぎ止めたかったのだろう。悲しいかな不器用なノラは、その思いを見つけ出した当人にうまく伝えきれないのだが。

二人の営む「サンシャイン・クリーニング」にある大きな仕事が入る。ところが同じ日、ローズはかつての友人からベイビーシャワー(=出産パーティー?)に誘われていた。事業も順調でまさに大きな仕事が入った今、かつての友人たちを見返してやりたいローズはどうしてもシャワーに出席したい。ここでのローズの選択が「サンシャイン・クリーニング」を窮地に追い込んでしまうことになる・・・。

最後はややお約束傾向(笑)なハッピーエンド。それでも家族たちが見せる清々しい笑顔はやはりいい。不倫に終止符を打ったローズの新しいロマンスらしきエピソードが終始あいまいなままだったのが残念にも思えるが、これはそもそもロマンスに発展するものではなく、むしろそれすらも乗り越えたところにあるのがローズのあの生き生きとした笑顔ということなのかもしれない。

数年前に起こったいわゆる“負け犬”ブーム。「私、負け犬だも~ん」と言う女性が私の周りにもちらほらいたものだが、言うまでもなくあの流行語は当事者が卑屈になって使う言葉だったわけではない。結婚や出産を幸せのゴールに見据える風潮や価値観を一蹴するような、そんな痛快な意味合いがあったのだ。

ローズとノラ。家族と共に新しいスタートを切るふたりの愛すべき“負け犬”たちに、心からエールを贈ろう。

 ☆『サンシャイン・クリーニング』公式サイト

この記事へのコメント

2009年07月20日 11:51
そうそう、「負け犬ブーム」って単に卑屈になるだけではダメなんですよね。
その言葉の裏に「今に見ておれ!」っていう強い気持ちがないと、頑張れないですからね。

人生、諦めるのはまだ早い!そう教えてくれた優しい映画でしたよ。
SOAR
2009年07月21日 22:59
にゃむばななさん、こんばんは♪
当時流行した「負け犬」、働く独身女性たちが半ば自嘲的に言ったわけですが、彼女たちには必ずしも卑屈な思いがあったのではないんですよね。むしろ誇らしげな雰囲気さえありました。
あきらめずに清々しいリスタートを切る姉妹の姿がよかったですね。
ほんと優しさにあふれた作品でした。
2009年08月01日 21:36
SOARさん、こんばんは!

>風潮や価値観を一蹴するような、そんな痛快な意味合い
価値観ていうのは時代によって変わるから、あまりそれに振り回されるのも、自分らしくありたいですよね。
SOAR
2009年08月02日 20:40
はらやんさん、こんばんは♪
その時代の価値観を完全に無視することはこれまたできないわけですが、自分を見失っては本末転倒。
価値観を意識しつつも「自分」をしっかり持つ彼女たちの姿勢がよかったですね。
2009年09月22日 13:55
負け犬は負け犬でいいのですが、なんかそれも自分で呼び寄せたような・・。
まず母ちゃん、しっかりしろよって思ってしまって、はまりきれませんでした。
もうちょっと共感できるとなあ。
自分を負け犬とか、勝ち組とか思ったことないからかな。
SOAR
2009年09月23日 11:06
sakuraiさん、こんにちは♪
おっしゃるとおりでけっきょく一連の不運や騒動の根源はすべてローズの一人相撲なんですよね。妹や周囲にイライラしている彼女本人が呼び寄せた試練。

まあそれでも、良かれと思って行動する一生懸命な彼女のがんばりは伝わりました。それもまた空回りなのが彼女のトホホな部分なんですけど(笑)

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