『サブウェイ123 激突』・・・情けないぞNYPD
ジョン・トラボルタ演じる地下鉄ジャック犯ライダーと、デンゼル・ワシントン演じる地下鉄職員ガーバーの心理戦。二人の名優のぶつかり合いはそりゃあもう見応えがあった。しかしながら、う~ん、逆に言えば主演がこの二人じゃなかったらあまり記憶に残らない作品のような気も・・・(汗)
前置きにダラダラと時間をかけずに事件が発生する導入は好印象。あれよあれよという間に乗っ取られるスピーディーな展開は、まるで劇中の乗客たちといっしょにこの事件に巻き込まれたかのような独特のスリルがあった。
ネゴシエーターが関連当局のプロではなく、たまたま運行指令室で席についていた職員というのも、先が見えない感じでサスペンスとしては面白い設定だと思う。
何よりこの作品が面白いのは単なる身代金目的の犯行ではないことで、捜査が進むにつれ徐々に明らかになるライダーの素性から、要求額の意味と彼のNY市長に対する私怨が浮かび上がる。さらにライダーが見据えるのは地下鉄ジャックによる株価下落であって、彼にしてみれば身代金はこのジャックを事件として成り立たせるための手段でしかないのも興味深かった。こういう乗っ取り身代金要求物で、犯人が自分の起こした事件による株価の動きをチェックするというパターン、あまり描かれたことがないんじゃないかな。
それにしてもNYPDが情けない。身代金をパトカーと白バイで運ぶ発想自体は間違ってないと思う。市内での移送にヘリを飛ばすのは準備や離発着の手間を考えると時間が掛かりすぎる。しかしさあ、同時スタートの先導白バイが要所要所で道路を封鎖して回るって作戦はどう考えてもおかしいぞ。目的地までのルートが決定したら真っ先にその区間を所轄が封鎖しておくのがセオリーじゃないかなあ。あんな一か八かの曲芸走行じゃ、そりゃあ事故るわな。
まあガーバーとライダーの息づまる交渉シーンの合間に挿入されるこのカーアクションは、映画的には別の意味で有効だった気もするけどね。
情けないその2。SWATだか市警の特殊部隊だか、地下鉄内に展開した狙撃班の彼!だめだよ~あそこで撃っちゃあ!(笑)
情けないその3。ラストで橋の上で対峙するガーバーとライダーの所に駆け付けるのが、なんで普通のおまわりさんたちなんだ?(しかもへっぴり腰の)
絵的に欲しいのは制服私服はともかく、やっぱりライフルやショットガン構えた精悍な警官だよなあ。
・・・ちょっと自分の趣味で劇中のNYPDを非難してしまったが、たぶん似たような考えを持った方も多いはず。
単純に狂気を表現するだけではないトラボルタの演技がいい。冗舌になったり急に目付きが鋭くなったりと、こういう“紙一重”的な役どころはゲイリー・オールドマンあたりがとにかくウマいけど、トラボルタのイっちゃった目や半端じゃない切れ具合もかなりの恐ろしさだった。
対するデンゼル・ワシントン。一瞬彼だとわからないほどのふっくらした丸顔に拍子抜けしたものの、悲しい目をした正義の男(私のイメージ)は本作でも健在で、いかにもな彼らしさがあふれていた。
この二人が無線でやりとりしているくだりがもっともおもしろい。ここから事件の裏側がポロリポロリと見えてくるので聞き漏らせないし目も離せないという緊張感の持続が強いられ、自然と引き込まれてしまうのだ。ただし、ガーバーとライダーが接触するあたりからは急速にそんな面白さがしぼんじゃったような気がする。
また、乗客の元空挺隊員、ビビッておしっこが出なかった男、何かしでかしそうな少年、そしてビデオチャット中のノートパソコンなど、なんとなく伏線を思わせるあれこれが結局活かされずに終わったのも正直ちょっとシラけたかも。
VFXやアクションに頼らない俳優同士のまさに“激突”する演技の迫力は最近観た作品の中ではダントツだったが、それだけではどうしても物足りなくなる。
リメイクであるうえにこのジャンルだ。新鮮味や奇抜さという名の高いハードルがあっただろうし、そんな中でけっしてマンネリな内容ではなかったことは評価したいが、もうひとつ、何かが欲しかったなと言ったら欲張りすぎだろうか。
そうそう。颯爽と現れたものの一瞬にしてライダーに嫌われてしまったイタリアンな警部補。最後はヘリから手を挙げてカッコつけてた(?)けど、ジョン・タトゥーロだけにあの時はもう勝負パンツに履き替えてたんだろうな~(爆)
★『サブウェイ123 激突』公式サイト
前置きにダラダラと時間をかけずに事件が発生する導入は好印象。あれよあれよという間に乗っ取られるスピーディーな展開は、まるで劇中の乗客たちといっしょにこの事件に巻き込まれたかのような独特のスリルがあった。
ネゴシエーターが関連当局のプロではなく、たまたま運行指令室で席についていた職員というのも、先が見えない感じでサスペンスとしては面白い設定だと思う。
何よりこの作品が面白いのは単なる身代金目的の犯行ではないことで、捜査が進むにつれ徐々に明らかになるライダーの素性から、要求額の意味と彼のNY市長に対する私怨が浮かび上がる。さらにライダーが見据えるのは地下鉄ジャックによる株価下落であって、彼にしてみれば身代金はこのジャックを事件として成り立たせるための手段でしかないのも興味深かった。こういう乗っ取り身代金要求物で、犯人が自分の起こした事件による株価の動きをチェックするというパターン、あまり描かれたことがないんじゃないかな。
それにしてもNYPDが情けない。身代金をパトカーと白バイで運ぶ発想自体は間違ってないと思う。市内での移送にヘリを飛ばすのは準備や離発着の手間を考えると時間が掛かりすぎる。しかしさあ、同時スタートの先導白バイが要所要所で道路を封鎖して回るって作戦はどう考えてもおかしいぞ。目的地までのルートが決定したら真っ先にその区間を所轄が封鎖しておくのがセオリーじゃないかなあ。あんな一か八かの曲芸走行じゃ、そりゃあ事故るわな。
まあガーバーとライダーの息づまる交渉シーンの合間に挿入されるこのカーアクションは、映画的には別の意味で有効だった気もするけどね。
情けないその2。SWATだか市警の特殊部隊だか、地下鉄内に展開した狙撃班の彼!だめだよ~あそこで撃っちゃあ!(笑)
情けないその3。ラストで橋の上で対峙するガーバーとライダーの所に駆け付けるのが、なんで普通のおまわりさんたちなんだ?(しかもへっぴり腰の)
絵的に欲しいのは制服私服はともかく、やっぱりライフルやショットガン構えた精悍な警官だよなあ。
・・・ちょっと自分の趣味で劇中のNYPDを非難してしまったが、たぶん似たような考えを持った方も多いはず。
単純に狂気を表現するだけではないトラボルタの演技がいい。冗舌になったり急に目付きが鋭くなったりと、こういう“紙一重”的な役どころはゲイリー・オールドマンあたりがとにかくウマいけど、トラボルタのイっちゃった目や半端じゃない切れ具合もかなりの恐ろしさだった。
対するデンゼル・ワシントン。一瞬彼だとわからないほどのふっくらした丸顔に拍子抜けしたものの、悲しい目をした正義の男(私のイメージ)は本作でも健在で、いかにもな彼らしさがあふれていた。
この二人が無線でやりとりしているくだりがもっともおもしろい。ここから事件の裏側がポロリポロリと見えてくるので聞き漏らせないし目も離せないという緊張感の持続が強いられ、自然と引き込まれてしまうのだ。ただし、ガーバーとライダーが接触するあたりからは急速にそんな面白さがしぼんじゃったような気がする。
また、乗客の元空挺隊員、ビビッておしっこが出なかった男、何かしでかしそうな少年、そしてビデオチャット中のノートパソコンなど、なんとなく伏線を思わせるあれこれが結局活かされずに終わったのも正直ちょっとシラけたかも。
VFXやアクションに頼らない俳優同士のまさに“激突”する演技の迫力は最近観た作品の中ではダントツだったが、それだけではどうしても物足りなくなる。
リメイクであるうえにこのジャンルだ。新鮮味や奇抜さという名の高いハードルがあっただろうし、そんな中でけっしてマンネリな内容ではなかったことは評価したいが、もうひとつ、何かが欲しかったなと言ったら欲張りすぎだろうか。
そうそう。颯爽と現れたものの一瞬にしてライダーに嫌われてしまったイタリアンな警部補。最後はヘリから手を挙げてカッコつけてた(?)けど、ジョン・タトゥーロだけにあの時はもう勝負パンツに履き替えてたんだろうな~(爆)
★『サブウェイ123 激突』公式サイト
この記事へのコメント
前半から飛ばしていた作品ですね。
一気に引き込まれた感じがします。
NYPDの情けなさはツッコミどころでしょうか?
もっと、違う運搬方法があったように思えます。
それでも、主演2人の演技はとても見応えがありました。
でもそこまで丁寧にリメイクするなら、ライダーのキャラなどをもっと丁寧にリメイクしてほしかったですよ。
と突っ込みつつかなり好きな作品でした♪
前半はなかなか面白かったんですけどね~
警察がショボイとか、人質に危機感がないし、あまり活かされていないとか、ライダーの目的もショボイとか、、、色々と粗が目につきました。
2大スターの共演は嬉しかったですが、それに頼り過ぎたかなぁ~物語がチープで残念でした。
つかみはよかったですよね。ガーバーが成り行きで交渉役に選ばれ、自身の裏事情まで暴露する形になったりと、なかなかおもしろいやりとりに引き込まれました。
陸送はとっさに思いつける最も手っ取り早い方法ではありますよね。サイレン鳴らせば絶対的優先権があるわけだし。
そっか、オリジナルでもある事故シーンだとすると、リメイクの過程で意図的に再現する必然性はあるわけですね。
あー、これはオリジナルも見てみる必要がありそうです。興味わいてきました。
オープニングの映像効果について論じているそちらの記事を読んで、おーそうだったと思い出した次第です。あれは上手い演出でした。
誤発砲のシーン、照準を合わせトリガーに指を掛けたままでひたすら待機というものすごく張り詰めた状況下での出来事なのはわかるんです。ただそれをフィクションの映画の中でやっちゃうと、かえってリアリティがなくなってしまいますよね。
後半の追跡&捕り物はオマケ・・・なるほど~(笑)
主演のスター二人に頼った作品ではないと思いますが、結果的にそんな感じになっちゃったのは事実ですね。
材料はいろいろ面白く揃えてるのに活かしきれてない様な、そんな印象を持ちました。
リメイクなりの制約もあるでしょうし、なかなか難しいところなんでしょうね。
おはようございます、
>それにしてもNYPDが情けない
ほんとですよね。
一介の地下鉄職員があんなに活躍しちゃうなんて
ありえないー!
でしたけど楽しめたので良かったです(笑)
悪役のトラさんもハマってましたしね★
ホント、この二人の対決じゃなかったらここまで盛り上がらなかったかも。
二人とも客を呼べる演技派ってことでオッケーでしょうか?
私はガーバーの上司にすごくムカつきました。
とっても嫌な感じだった~。
私の目当てはデンゼルのほうだったのですが、トラボルタの悪役っぷりに釘付けでした。
困りながらも覚悟を決めて交渉に臨むという序盤のガーバーはとてもよかったのですが、最後は・・・ねぇ(笑)
まあこういう映画は嫌いじゃないので、よしとしましょう。
二人のネームバリューは相当な物ですからね。もちろんけっしてそれに頼った作品ではないですが、そんな風にも感じられました。
そうそう、あの上司、嫌ですねえ。ガラス越しに警部補とひそひそやってるのをガーバーが見つめるシーン、あのときのデンゼルの表情が印象的でした。
スイマセン。
二人ありきの映画でしたが、あまりにもらし過ぎて、先が読めてしまいました。
もっと意外性のある配役だったら、いいかもと思ったのですが、そしたら、普通の映画かな・・・。
トニー・スコットらしさが、いい意味でも、悪い意味でも出てたような気がしますわ。
私こそ忙しさにかこつけて、TBのみで失礼することも多くなんだか申し訳ないっス(汗)
両者とも正義と悪、どちらもこなせる俳優ですが、やはりデンゼルには正義漢が似合うし、トラボルタは胡散臭い役が似合うので(いずれも主観ですが)、配役での意外性はたしかになかったですね。妥当でした。
トニーらしさ・・・。私「クリムゾン・タイド」が大好きなんですが、デンゼルとジーン・ハックマンの“対決”を思わせるようで、それには及びませんでしたねぇ。あっちはすごかった。閉鎖空間から出たあとのドラマもあっちのほうが秀逸です。
いろいろと同感です。あの二人の緊迫した駆け引きがなかったら、見終わって怒ったかも?です。
前半の二人の駆け引きが良かっただけに、それ以外のアレレ?が際立ってしまった感が残りました。
よいと思ったその駆け引きさえも、鑑賞して2週間も経つともはや忘却の彼方・・・(笑)
おっしゃるようにアレレ?満載の内容も思い出すだけで怒りそうです。
2大スターのネームバリューだけが命の作品だったようですねぇ。