『ATOM』・・・「まつ毛のないアトムなんて!」(友人談)

ロボット工学の第一人者である博士が、不慮の事故で亡くなった息子の記憶を移植したロボットを作る。アトムと名付けられたそのロボットは正義の心を持ち人間のために悪と戦う・・・。1950年代に生まれたこの物語がいまだに世界中で愛され続けるのはなぜだろう。そんなことを思いながら鑑賞した。

冒頭次々と画面に現れる豪華キャストの名前は、吹替え版で観ている身にはあまりにショックな顔ぶれ(笑)
事前に知ってたキャストがニコラス・ケイジとフレディくんだけだった私にとって、ビル・ナイ、サミュエル・L・ジャクソン、シャーリーズ・セロンといった驚きの豪華声優陣は悔しいけど魅力たっぷり。ぜひオリジナル版も楽しみたいところだ。

もちろん吹替え版も捨てたものではない。アトム役の上戸彩が相変わらずのすばらしい吹替えを聞かせてくれた。アトムと言えば清水マリだが、あの張りのある声と演技にけっして引けを取らない上戸の演技はお見事。彼女の声優としての高い才能は『ピアノの森』の時に納得済み。洋画の吹替え版における俳優やアイドルの起用には、ぜひ彼女のようなちゃんとした人選をお願いしたいものである。

上戸と役所広司の脇を固めるのが実力派の本職声優陣だったことも、近年の吹替え版作品と比較してみるといい傾向だ。林原めぐみ、山寺宏一、富田耕生、かないみか、内海賢二・・・。アニメ好きなら名前を聞いただけでパッと声が浮かぶようなこの豪華メンバー。手塚キャラのヒゲおやじに当たると思われるキャラが富田さんの声でしゃべり出したときはホントうれしかったよ。

基本設定や序盤のストーリーは元々の「鉄腕アトム」から大きく外れることもなく、まあ無難なリメイクといったところだが、逆にそのため押さえどころがブレていない。
純真な思いで人のために尽くすアトムが、ロボットであるがゆえに認められなかったり時に裏切られたりする悲しさが原作にはあり(これはそもそも手塚作品に共通するところ)、アトムが単なる正義のヒーローではないあたりが作品としての深さでもあるわけで、そこは本作でもきちんと作られていた。またアトムが持つ強い自己犠牲の本能(?)もちゃんと描かれていて、こうした「アトム」の核心を監督以下スタッフたちが理解していたことがうかがえた。
その一方、いかにもアメリカのアニメっぽいなと思ったのが軍を操る悪い大統領や、廃墟でたくましく生きる子供たち、そして愛嬌あるロボット三人組などの各キャラクター。正義、悪、仲間といった内容を盛り込む上でのお約束な存在だが、やはりこういうキャラがいると作品が王道なりの“しまり”を持つので、この新キャラ設定にはいい印象を持った。(トラッシュカンもかわいかったね)

アトムの駆動エネルギーとしてのブルーコアという概念もわかりやすくていい。生成時に同時にできてしまう物質レッドコアというのも単純だが面白い。駆動源であるエネルギーが同時に“心”にもなって、装着されたロボットの性格に影響する。青と赤、正義と悪。まあ、どっかで聞いたような設定ではあるのだが・・・。

肝心のアトムのCG造形については賛否がありそうだ。私のイメージではアトムは3頭身くらいがカワイイと思う。実際テレビ版アトムも3~3.5等身程度じゃなかったかな。本作のアトムは4頭身位で足が長め、スタイルもいい。目もオリジナルよりは小さめできりりとしたマユ。
うーん、これはこれでいいのだが、やはりアトムは二枚目よりもカワイイほうがいいんじゃないかなあ。カワイイくせにカッコイイ。それがアトムの魅力なのではないだろうか。
そういえば本作のアトムにはまつ毛がない。手塚絵の特徴とも言えるパッチリ大きな瞳に長いまつ毛の組み合わせは省いてほしくなかったな。アトム通の友人も先日そんなことを強く訴えてたっけ(笑)

エンドロール中盤で流れた「空をこえて~」の主題歌が、80年版テレビアニメのOP曲だったことに思わず興奮してしまった。初代白黒版アトムの放送は私が生まれる前のこと。だからあの名曲は少年時代に見ていたこっちのアレンジのほうがしっくり来るのだ。
主メロと基本コード進行は手を加えず、ベースラインに動きを付けノリをよくしたナイスアレンジである。仮に歌い出しのコードがCmajで「空を」の音程がEだとした場合(私絶対音感ないもので・・・)、「空をこえて ラララ」の2小節(8拍)のうちにベースはCからAまで半音ずつ下りてくる仕掛け。
まずCで1~3拍、4拍目がB、2小節目1、2拍目がB♭、3拍目でAに落ち着く。これをオクターブ飛びの8分に16分を織り交ぜた16ビートのスラップ(チョッパー)で演奏しているため、初代主題歌とは一味違う躍動感みなぎる雰囲気に生まれ変わっているんだよね~。
懐かしアニメの特番で必ず登場するアトムだが80年版はほとんど取り上げられないので、スラップベースがむちゃくちゃカッコイイこのアレンジ版主題歌を聴けて元ベーシストの私は満足満足~♪(くどいようだが曲の正しいキーはワカリマセンヨ)

久しぶりに音楽話に脱線してしまった(汗)

本編に戻って、と。
無難なリメイクと前述したがせっかくの3DCGでの海外(米・香港)リメイクだ。制作サイドがもっと遊んでもよかったんじゃないかなとも思った。
ただし、この控えめながらポイントをけっして外さないリメイクが、世界に誇るジャパニメーションの先駆者としての「鉄腕アトム」に対する、そして手塚治虫に対する世界からのリスペクトの表れによるものだとしたら、日本人としてこんなにうれしいことはない。

余談。友人の息子に「アトム」くんがいる。最初に聞いたときは驚いたが、表記はカタカナではなく漢字3文字で日本の男の子らしい自然な字面だし、読む上での難解さも全くない。名付けた友人夫婦のセンスに脱帽である。

 ★『ATOM』公式サイト

 ★関連過去記事 『ピアノの森』・・・小学生時代のカイたち♪

この記事へのコメント

2009年10月12日 22:34
CMで見る限り、アトムの面長な顔が、私は受け付けないですよ~(苦笑)
子どもが出来たら、アトム君にウランちゃんって、ブログで呼びたいのです(笑)
SOAR
2009年10月13日 00:09
ちゅうさん、こんばんは♪
たしかにアトムは丸顔じゃないとね。でも、観終わってみると違和感はかなり薄れちゃいましたよ。思った以上によい作品でした。
それほど思い入れがあるならぜひ劇場でご覧になってみてくださ~い♪
2009年10月24日 21:04
SOARさん、こんばんは!

海外リメイクなので、ちょっと心配でしたが、書いてらっしゃるように手塚作品の核心をきちんと押さえていましたよね。
それだけ手塚作品は海外にも根付いているということなんでしょうかね。
僕は基本的に字幕派なのでそちらに行きましたが、予備知識はなくて。
冒頭のクレジットでギューンギューンと錚々たるネームが飛んでくるので、スゴいキャストだなーとびっくりしました。
フレディ君も上手でしたよー。
SOAR
2009年10月25日 18:14
はらやんさん、こんにちは♪
多くの日本人の心の中にアトムはいるわけですから、海外リメイクの話を聞いたときは私も嫌な予感がしました。
でも作品が持つ大切な部分はきちんと引き継がれたようで、その点はほんとに満足です。

でしょう?
冒頭の次々に浮かび上がるキャストに正直気絶しそうでしたよ!(←ちとオオゲサ)

そちらへのコメントで書き損ねましたが、ハムエッグについて言及するはらやんさん、なかなかの手塚通と見ましたぞ(笑)
2009年11月09日 08:30
どうもおお。
いやね、まじに見ないでこうと思ったんですよ。
絶対に失望すると思ったから。
でもここは一念発起、見にいったわけで・・・。
SOARさんがおっしゃるように、無難にまとめて、正道をはすさないようにしたのが、よかったと感じました。
下手のことするより、ずっといい。
町のポスターにひょうたんつぎがいたり、ちゃんと手塚先生がいたり、小さなツボが抑えられててほっとしました。
あのアトムの造形はわざと縦に伸ばしたと聞きました。
もとのままだと、ちょっと幼すぎるとか。
凶悪な敵をやっつけるのに、あんまり可愛いのではだめなのかも。
なにはともあれ、見てよかったです。
SOAR
2009年11月11日 23:12
sakuraiさん、こんばんは♪
場合によっては海外での斬新な新解釈によるリメイクも楽しめますが、こと手塚作品に関しては正道で行ってほしいんですよね日本人としては。
そのあたりをよくわかっての作りになっていたのはうれしかったですね。
ヒョウタンツギまで出してくれるとは♪
手塚本人の登場も彼の作品では定番ですから、その再現もナイス!

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