『かいじゅうたちのいるところ』・・・少年が出会ったのは自分の心

もっとほんわかのんびりとしたハートフルファンタジーを期待していたのでこの内容は意外だった。少なくとも親子で楽しむファミリー映画ではないような気がする。これ子供が観ておもしろいのかなあ・・・などと余計な心配までしてしまった。

甘えたりキレたり泣き出したり叫んだりと、マックス少年の心は繊細というよりとにかく不安定だ。序盤こそエピの並べ方のうまさもあって彼に共感しつつ見入ったが、歳のせいだろうか、テーブルの上で暴れ出した彼に困り果てる母親のほうにむしろ感情移入してしまった。強く叱られ家を飛び出すマックスと、あわてて彼を追いかける母親。ここでどちら目線になるかで作品への思いも違ってくるかもしれない。

いつの間にか別世界に入り込んでしまったマックスが出会うかいじゅうたちも一風変わっている。いじけてたりひねくれてたりと暗めのキャラ。このネガティブさは紛れもなくマックスの心のうちそのものである。穏やかかと思えば突然怒り出すというキャロルの性格など姉や母親に対するマックスの心情や行動にそっくりだ。マックスが最初に意気投合するのも当然このキャロルなのだが、後半彼にとって最も恐ろしい存在となるのもまたキャロルである。
こうしてマックスは知らず知らずのうちに自分自身を客観視し、その一方で彼をかばってくれる優しいKWに理想の母や姉を思い重ねるのだ。

過去に現れた王様の末路を示すゾクリとするような描写もあり、またキレたキャロルがかなり怖い。まあ“WILD THINGS”なのだからそれでいいのかもしれないが、結局私は最後までかいじゅうたちにかわいらしさや愛嬌のようなものを見出せなかった。

かいじゅうたちと暮らすうちに自分の過ちに気付いた少年がいい子になって母の元へ帰っていく。母のほうもこれからは少年にもう少し優しくしてあげようと思いつつそんな彼を出迎える。
原作絵本は未読ながら要はそういう筋書きなのだろうから、それがもっとストレートに伝わってくるようなストーリーだとなおよかったのになあ。
たとえばマックスがキャロルにあるマークを描き残し、その気持ちがキャロルに伝わるシーン。このマークは序盤にちゃんと伏線があり、それをキャロルに宛てて描くことで現実世界の家族を思い直すマックスの成長ぶりが見て取れる名場面なわけで、こういうのをもっとバシバシ見せてもらえてたらより感動も高まったのだが・・・。

そうだ。マックスの先生が太陽の最期や自然環境についての授業の中で「津波」のことを「ツナミ」って言ってた(授業シーンのあと)。これって日本語が語源ってこと!?

ちなみにあの世界の住人で私が一番気に入ったのは、砂漠の丘を重量感たっぷりに歩いていた巨大な“犬”!

 ☆『かいじゅうたちのいるところ』公式サイト

この記事へのコメント

2010年01月16日 23:56
こんばんは。
わたしはこれものすごくグッときました
かいじゅうたちが愛おしくて。
これはCGではないからこそだと思います~。
あの短い絵本からここまでの映画になったのはやっぱり
監督の力量とこの絵本のファンだからこそ。

あ、ツナミは今やもう海外のニュースでもツナミって言うし、一般に浸透してますよ~。^^
2010年01月17日 00:03
こんばんは~♪
わたしは、マックスもママもすっかり通り超えた、婆目線で観ておりまして、
マックスがあんなにキレてしまうのも、
大事なポイントを押さえ損ねてる、若くて忙しいママだから仕方ないよね…と
かつての我とわが子を振り返りつつ、全体を見守るような感じで観てました。

そうそう。絵本は肩透かしを食うほど、あっさりしていて
受ける印象は、教訓的でも成長物語でもありません。
今度、本屋さんで立ち読みしてみてください。すぐ読めてしまいます。
ちなみに、‘津波’は‘駅伝’‘旨み’なんかみたいに、
日本語がそのまま使われているようですよ。
2010年01月17日 07:47
おはようございます。

子供向け・・・というよりは大人向けなファンタジーでしたね。
あのかいじゅうたちに小さな子供では泣いてしまうかもしれません。

ストーリーはマックスの成長を追っているような感じでした。
その中で巧みに彼の心の成長が描かれていたと思います。
2010年01月17日 12:43
こんにちは。

>母親のほうにむしろ感情移入してしまった。

本当にここが分かれ目なんでしょうね。
ママ、彼氏といちゃつく(笑)のはちょっと控えた方が良いとは思いますが、お姉ちゃんの部屋を濡らした時の対応もヒステリックじゃなかったし、仕事の合間に空想話聞いてあげるし、マックスの気持ちも解るけど、あんなお子様持つ親御さんは大変だ~と思いました。
ほっこりとした感動系かと想像していたら、自分が投影された怪獣に、人の振り見て~な教訓っぽい感じでした。

幼い子供より、思春期反抗期な年齢の子の方が何かしら感じるかも知れませんね(笑)
2010年01月17日 13:15
絵本って子供を楽しませる表の面と、子供に人間関係の大切さや生きる術をそれとなく教える裏の面を持ってますからね。
私は子供向けにせず大人向けにしてくれたところに、スパイク・ジョーンズ監督の素晴らしさを感じました。
dai
2010年01月17日 14:00
こんばんは☆

コメントありがとうございました★

ファミリーで観るにはう~んって感じでしたね。
映像だけの作品にしか思えなかったです。

>「津波」のことを「ツナミ」
津波は国際語らしいですよね。意外に日本語で国際語になっているものってあるらしいですよ。
SOAR
2010年01月17日 16:29
migさん、こんにちは♪
マックスへの感情移入がし切れなかったこと、かいじゅうたちに愛おしさまで感じられなかったこと。
私にとってこの二点が致命的だったようです~(汗)

ただ、作品へのスパイク監督の熱い想いはものすごく伝わりました。

ツナミは海外で通用するんですね。国際派のmigさん、ご教授ありがとうございます!
SOAR
2010年01月17日 16:30
悠雅さん、こんにちは♪
婆目線って・・・!(でもウケタ)
お子さんを一人前に育て上げた悠雅ママならではの目線っていうのがおありなんでしょうね。
あのお母さんも冷たかったりイジワルなわけではないんですよね。まだ恋もしたい若さがちょっとポイントを押さえ損ねてる、なるほど~。
若いママとマックスを見守る婆目線、ステキです!

そっか、カラオケなどと同じなんですね。みなさんありがとうございます。
SOAR
2010年01月17日 16:30
BROOKさん、こんにちは♪
ストーリー自体は子供にも伝わるはずですが、それにしては難しい含みのような物がちょっと気になりました。
かいじゅうたちの造形もよくできてましたが、たとえばガチャピンくらいの愛嬌がないと子供には怖そうですよね。

マックスの心の成長、最後に母に抱かれる彼の表情でたしかに伝わりました。
SOAR
2010年01月17日 16:30
オリーブリーさん、こんにちは♪
あの吸血鬼の空想話のシーンで、マックスの賢さと甘えたがりなところがよくわかります。そしてお母さんの優しさも。(机の下でお母さんの脚に甘える彼がかわいかったです)
一方でまだまだ恋もしたいお母さんの気持ちもわかるしなあ。マックスに共感するには少々おじさんすぎたかも知れません私(笑)

あ~それ言えるかも!スネカジリのクセにウザイウザイを連発する多感な少年少女なら何かを見出すかもしれませんね。
SOAR
2010年01月17日 16:31
にゃむばななさん、こんにちは♪
絵本が幼少期の教育に欠かせないのはまさにその二面性があるからです。でも絵本が原作だからといってそれをそのまま映画に反映させる必要は別にないわけで、このあたりがスパイク監督のセンスの良さなのでしょう。

ただ、子供の目線で観ても単純に楽しめるような味付けもしてほしかったなとも思いました。
SOAR
2010年01月17日 16:31
daiさん、こんにちは♪
たとえばモンスターズインクのような作品を期待して子連れで出かけてしまうと微妙なんじゃないかな~と、世のお父さんお母さんに対しそんな心配をしてしまったんですよね。

ひええ、daiさんからも。そうか、れっきとした国際語なんだ。私のドメスティックな脳はタジタジです(笑)
2010年01月27日 08:11
どもです。
犬、そう言えばいたいた(笑) よく覚えてますねえ。
私はKWが好きです。 大人目線だからw

これは小さい子どもというよりも、小学校高学年くらいの子が見た方がわかるかなあ。
SOAR
2010年01月29日 23:36
rose_chocolatさん、こんばんは♪
いたでしょ?砂丘を行くでかい犬。ああいうの好きなんですよねえ。
KWはマックスが求める癒しや愛情の理想像そのものだったんでしょうね。

絵本と聞くと幼児をイメージしますが、少なくとも映画化された本作自体はもっと大きな子供たちが何かを感じてくれそうですね。

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