『イングロリアス・バスターズ』・・・エキセントリックな男たち

タランティーノ監督作品には苦手意識があり、『キル・ビル』など有名どころも含めこれまできちんと観たことがない私。本作も当初は何事もなくスルーで終わるはずだった・・・のだが、劇場予告やら紹介番組を見ているうちに興味がわき、この「食わず嫌い」克服のきっかけになりそうな気もしてきたので劇場に足を運んだ。

ナチス占領下のフランス。「ユダヤハンター」の異名をとるSSのランダ大佐の残虐なユダヤ狩りシーンが衝撃的。ユダヤ人をかくまっている農場主ラパディットと最初はフランス語で話をしているが、お互いに通じやすい英語で話そうと持ちかける。しかしこれは床下に潜んでいるユダヤ一家に話の内容がわからないようにするためで、フランス語に会話を戻してから銃撃までの“芝居”が空恐ろしい。
そしてこの殺戮の現場からただ一人脱出した娘ショシャナ(メラニー・ロラン)の、ナチスに対する復讐劇が本作のひとつのストーリとなる。
これと並行するもうひとつのストーリーがレイン中尉(ブラッド・ピット)率いる連合軍秘密部隊、通称“イングロリアス・バスターズ”による過激なナチス掃討作戦で、ナチスに対し種類の違うこの両者の憎悪や思惑がナチス宣伝相ゲッベルスの企画したプロバガンダ映画のプレミア上映の会場へと集約していく過程が刻々と描かれていく。

自分の映画館がプレミア会場に決まったこと、そしてランダ大佐とまさかの再会によって始まるショシャナの復讐計画。こちらは水面下で静かに着々と進んでいく印象。感情をあまり面に出さないショシャナが淡々と確実に劇場炎上の準備を進めてていく。
一方レイン中尉のバスターズによる派手な“ナチス狩り”は、その残虐行為でヒトラーをも悩ませる。彼らは捕虜を取らないのだ。すなわちその場で殺すか額にカギ十字を刻んで逃がすかの二つに一つ。
彼らもまたショシャナとは別のところでこの上映会場の爆破を企て、現地への潜入を試みつつあった。

ブラピ演じるレイン中尉のアクが強いこと強いこと。
この中尉かなり冷酷でエキセントリックな男なのだが、どうせブラピの演じる役なんだからそのうち敵兵への優しさなんぞ見せたりするんだろう・・・なーんて思っていたので目がテン(笑)
バスターズの面々も極秘部隊の精鋭という風貌にはほど遠く、やさぐれたこれまたエキセントリックな集団で、殺害したナチス兵の頭の皮を笑いながら剥いだりする。
登場人物の一人がレイン中尉からあることをされるシーンで本作は終わるのだが、ブラピのセリフがまた一味効いていて独特の余韻を残していた。

予告で印象的だったモノクロのショシャナが笑いながら炎に包まれるシーン。
なにかイメージ的なものだと思っていたら、まさに彼女が映るスクリーンが裏から燃えていたのね。ナチス幹部が一堂に会する劇場に火を放つことで復讐を果たそうとした彼女が切り貼りしておいたこのフィルム。家族を殺された少女の心に刻まれた悲しみと怒りが狂気となってこのフィルムに焼き付けられていたかのようだった。

ナチスへの憎悪だけを胸に生きてきたであろうショシャナは口数も少なく感情もほとんど面に出さないのだが、そんな彼女の表情が一度だけ泣き顔に崩れかかるシーンがあり、これが印象に残った。ランダ大佐と再会し、彼が自分の正体に気付かないまま去った後に見せるのがその表情。スクリーンに映し出された狂気の笑顔とは対照的な彼女の素顔だったのかもしれない。

バスターズのメンバーがバットでナチス下士官を殴り殺すシーンなど、やっぱり私にはちょっとムリがあったかも。顔面や股間を撃たれるっていうのもムリだ~。一般的な映像作品でのマシンガン乱射では胴や手足にしか弾が当たらないというお約束があるわけだが、たとえ不自然であっても私はそのほうがいいデス・・・。

というわけで初体験のタランティーノ作品。見応えはたっぷりあったし熱い物も感じた。前宣伝の「つまらなかったら金返す」には当てはまらないだけの満足感も得たと思う。
しかし残念ながら私の好みではなかった。たぶん熱烈なタランティーノ監督ファンなら絶賛となるのだろう。もしかすると物足りないなんていう猛者もいるかもしれない。

まあこの際バイオレンス描写のキツさは措いとくとして、ショシャナの炎上計画とバスターズの爆破作戦とがもっとおもしろくリンクするとか、レインの下手なイタリア語が誰かの機転によって奇跡的にバレずに済むとか、ダイアン・クルーガー演じる女スパイが絶体絶命のあの現場にブラピが颯爽と駆けつけるとかすると、私の好みの展開に近づくのだが、それやっちゃうと逆にタランティーノらしさがなくなってしまうんだろうね。

監督が来日の際に出演した某番組で「映画館が炎上し爆破されるというくだりで、実際にこの作品を映画館で観ている皆さんがそわそわきょろきょろしてしまったらおもしろいでしょう?」といったことを話されていたけど、タラちゃんそれはワルノリってもんです(笑)

そうだ。劇場入りするナチス幹部の中でゲッベルスの他ゲーリングとボルマンだったか、彼らに矢印付きのテロップが表示されたけど、これって監督ならではのパロディかなんかなのかな~?

 ☆『イングロリアス・バスターズ』公式サイト
 ☆ブラッド・ピット出演作 『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』 09/02/07
 ☆ダイアン・クルーガー出演作 『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』 08/01/13

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