『うさぎドロップ』・・・原作前半のダイジェスト的な印象

映画化の話を聞くまで全く知らなかった原作コミックの存在。最近になって映画館配布の小冊子にて試し読みしたその第1話にたちまち惹かれてしまい、気付けば全9巻まとめて大人買いというにわか「うさドロ」ファンの私。
やはり5巻以降で描かれる10年後のストーリー(予備知識ナシで5巻の表紙を見たときはタマゲタ)があってこその「うさドロ」だと思うのだが、本作はその序盤、まずは大吉に引き取られることになったりんの保育園時代のお話。

身寄りをなくした幼児を独身男が引き取るという設定は阿部サダヲ主演のフジ系ドラマ、『マルモのおきて』と同じであり、どちらにも芦田愛菜が出てるのが興味深い。撮影時期も近かったと思うのだが、両者をきちんと演じ分ける芦田の才華、やはりタダモノじゃないねこの子。
過去にも触れてると思うが、彼女のセリフはきちんと話し言葉としての抑揚があるのがすごいところ。覚えたセリフを一語一句間違えずにきちんと“棒読み”できることが上手な子役の定義ではないのである。テレビでスクリーンで愛菜ちゃんを見るたびにそう思う。



祖父の隠し子(らしい)少女りんを勢いで引き取ることになった大吉を、母親の一言が容赦なく苦しめる。

「子供を育てることで私がどれだけ自分を犠牲にしてきたかわかるか?」

さらには「妊娠中から、娘ではなく仕事を選ぶことに決めていた」と言い切るりんの母親の態度にも大吉は困惑してしまう。
安易に名乗りを上げたことに後悔しそうになるそんな大吉を救うのが、会社の仲間やりんの初めての友だちコウキの母ゆかりだ。一見ガラが悪そうで実は子煩悩な若いパパたちに勇気をもらい、子育ての先輩である“後藤さん”がさらりと言い放つ一言で自信を取り戻す大吉。サバサバとしたコウキママを前に、強くなることではなく臆病になることの正当性を見出す場面も実にいい。

脚本は基本原作に忠実な流れで、終盤の“脱走→冒険”がオリジナル。コウキの身の上をうまく見せる形になってはいるが、大人たちが仕事そっちのけで街中を探し回るというシチュエーションは正直アリガチかな。それに他ならぬ芦田が友だち数人と幼稚園を抜け出すというドラマもこの前あったばかりだし、そのあたりはやや新鮮味に欠けたかもしれない。

それと。
これは好みの問題だが、この手の作品だけにもう少し泣かせる演出に偏ってもよかったんじゃないかなと、そんな風にも思った。その意味では原作コミックの前半を、親の目線でさーっとなぞりました的な印象。ダイジェスト版とでも言おうか。大吉の両親や従兄妹、そしてコウキ親子とりんの母正子の身の上などの描写が浅いのがとにかく残念。特に正子はもっとじっくり描くべきだったんじゃないかな。つかみどころのないキャラのまま終わっては絶対いけない人なのに!
で、そのわりに妹カズミの彼氏や児童施設の職員など必然性の見えないオリジナルキャラが配されてたりするんだよねぇ・・・。


おねしょをしたりんが、「これは汗だもん!」と主張する姿はなんともいじらしく印象的であった。ちなみに原作コミックではある人物があるモノを“汗”だと主張して終わる。そんなラストシーンにつながる最後の数ページに私はすっかり泣かされてしまった。本作を気に入った方で原作コミック未読の向きはぜひ手に取っていただきたい。
親の目線で語られた物語が10年の時を経て今度は高校生となった子供たち(りん、コウキ、麗奈)の目線で語られていく後半、これまた引き込まれますよ~。


どうせなら映画版も、10年後に36歳の松ケンと17歳の愛菜ちゃん主演で続編ができたらいいかも・・・・・なーんて、ふと思ってしまった。


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